事前期待のコントロール

会社の近くに「日本一美味しいミートソース」をキャッチフレーズにしたイタリアンがあります。

生麺のパスタを出す店で、たしかに「これは美味しい!」と感動するレベルの味です。

 

ただ、「日本一美味しい....」という事前のインプットがある故に、どうしても「日本一に相応しいか」という尺度で評価してしまいます。「たしかに美味しいけど、日本一かなぁ...」と感じてしまう方は多いかもしれません。

 

キャッチフレーズとしては惹き付けるものがあり、料理も非常に美味しいのですが、この看板はプラスマイナスで言うと私はマイナスに作用していると感じます(それなりに賑わっているお店なので、看板倒れではありませんが)。

 

顧客満足は、顧客の「事前期待」を充足することで得られる、と定義されています(サービスサイエンス)。同じサービスであっても事前期待の低いお客は「予想外のサービスが受けられた」と感じる一方、事前期待の高いお客は「こんなはずではなかった」と感じると思います。そこで提供されているサービスの品質だけで顧客満足が評価されているわけではなく、顧客がサービスを受ける前に頂いている期待値が大きく関係してくるという理屈です。

 

先ほどのお店では、このキャッチフレーズに惹かれて入店する「新規顧客」も多いと考えられ、プラスの効果も十分にあると思います。ただ、非常に高い事前期待を設定しているので、それを上回る「満足」を得られるお客さまは少ないのではないでしょうか。私も、美味しかった記憶はあるのですが、それ以降、お店を尋ねていません。「日本一かどうか...」というハードルに対してそれを上回る満足感が残らなかったのかも知れません。